未開地域
Argonia
これらの広大な沼沢地はかつて第二帝国の一部であったが、第1紀2837年、その大部分が帝国属州のBlack
Marshを形成することになった。多くの人間は未だその名によって当該地域を呼んでいるが、彼らの祖先の多くが倒れた或る古戦場に因んでエルフは当地をArgoniaと呼んでいる。従って、その沼沢地の原住民すなわち“トカゲ人間”の野蛮な部族集団は、通常の言い回しでは、Argonianとなったのである。
Histと呼ばれる幾らか知的な種族を除いて、Argonianは彼らの郷土の外では滅多に目にされない。この種族の各人は不愉快きわまりないものだが、人間の王国の内で容認できるほどに穏健であり、Black Marshから西方のHammerfellまで見出されうるものである。その他のArgonianは原始的であり世捨人めいており、彼らの地元の沼沢地の奥地でしか育たない或る種の胞子樹木の付近で為されねばならない自然崇拝の異教の儀式を実践している。
Black Marshは、第二帝国の解体の後、その属州としての地位を決して回復することなかった――もっとも、その或る部分は未だ帝国領として見做されている。共通紀元560年、Knahatenインフルエンザが多数のArgonianの間で蔓延して、その地域に長らく耐えてきた唯一の人間達であるKothringi部族の人々の命を奪った。Histはこの疫病の影響に免疫を具えていることが判明した――突飛な噂によれば、実際のところ、大事にしている胞子樹木を操作して彼らがそれを作り出した、ということである。
Pyandonea
Summerset Islesの遥か南に、熱帯エルフの特殊な種族のMaormerの故郷であるPyandoneaの島王国が存在する。その大半は密集した雨林に覆われており、南方の水の精にとっての行楽地である。MaormerがTamrielに足を運んだりSummersetの同族の下を訪ねたりすることはまず決してない――彼らは太古に後者の〔Summersetの〕王国から追放されているからである。彼らは、森と結び付くBosmerの技術に似た、無意識下に変化するカメレオンのような奇妙な肌を持っていることが知られている。彼らもまた、蛇の術による力強い形態を実践している。これによって、乗馬あるいは戦獣として使用するため彼らは島の海蛇を飼い慣らしてきた。Maormerの支配者は、Satakalの蛇の神とされる不死の魔導師Orgnum王である(「Hammerfell」を見よ)。
Thras
珊瑚礁の諸王国Thrasは、Abecean海のChainの南西に在る群島の集合であり、神を持たないSloadと呼ばれる獣人の部族の故郷である。これらの水陸両生のナメクジ人間は恐らくTamriel全土で最も憎まれる種族であり、絶滅したものであると長らく考えられてきた。Sloadが第1紀2200年にThras悪疫(大陸の人々の半数以上を死に至らしめた)を放った後には、Tamriel史上で最大の連合海軍がThrasに向け出帆して、発見できたSloadの全員を虐殺して、未知の大魔術によって彼らの珊瑚礁の諸王国を海中に沈めた。
悲しむべきことには、Thrasは再浮上して、その主人たるSloadは最近Tamrielの様々な地域で目にされていると報告されてきた。市民はこれらの野獣を避けて、その存在を知り得た際は直近の帝国官憲に接触するべきである。そのナメクジ人間に関して多くの事柄が記憶されており、諸君のために直近の補足記事に於いて収集しておいた。警戒せよ。
Anvilの〈西の王〉であり海軍全旗艦の男爵提督であり〈Thrasの汚点に対して迅速な正義を執り行う者〉であるBendu Oloの覚書から収集されている。
ライフ・サイクル
少年:不愉快きわまりない不定形の小さな蛆虫
青年:陸に上がることが出来ない、水の滴る蛸に似た軟体の生物
成年:〔少年・青年と成年の区別は〕年齢や体格という外面的境界〔によるもの〕ではない。Tamrielの陸上で見られる個体は老齢かつ肥満した成年が多い。貪欲という〔Sloadの〕特徴はこれらの個体によく見られ、彼らは商人や密輸業者として優れている。年少の成年は陸上で生き抜くのに重要な技術を欠いており、滅多に陸上で見られるものではない。年輩の成年は、水に浮かんでいない限り、自身の体重によって潰れてしまう。
才能
完璧な記憶力。彼らは読み書き出来ないが、その見たもの聞いたものを全て記憶している。
魔術熟達:陸上を徘徊するSloadの全員はRecallの呪文を高度の技術で習得しており、旅の常の遣り方として、それを日常的に頻繁に使用している。それはまた、最上の防御を提供している――彼らは本能的に困難から瞬間移動するものである。我々は歩行せねばならないのに!
傾向
貧困な把握力、道具の不得手。[陸上や〔陸上の〕物体に適合するための外皮にSloadは少しずつ慣れていき、物体を持ち上げたり不快なナメクジのように物体の上を登ったり出来るようになる。]のろい! 彼らは自身が非常に機敏であると思っているが、彼らの注意ぶかい慎重な性格にピッタリという程にも決して充分ではない。彼らは、ゆっくり動き、ゆっくり行う。決心に至るまで長時間を要する。望めば、彼らは機敏に受け答え出来る……それは滅多にないことである。
注意ぶかさ。彼らの言語に「冒険」という言葉は存在しない。最も近い同義語は「悲劇的災難」を意味するものである。彼らの英雄神話は何れも、当て無く座り込みながら何年も何年も思索して、Sloadの賢者と慎重に協議して、それから漸やく行動に移る――常に慎重、常に成功――ような、そのような個人に関するものである。彼らの神話の仇役は誰しも、機敏に行動して、常に失敗することになる。
道徳的嫌悪:遭遇したSloadの個人は誰しも、貪欲で無情な自己愛が強い不信心の陰謀家であった。馴染ぶかい人間的感情の何れも、経験することも表に出すこともないようである――もっとも、彼らは熟練した外交官にして役者であり、人間の振る舞いの誇張した粗悪なパロディーを演じている[時代おくれのジョークに笑い、見せ掛けの不幸に泣き、愚鈍や愚行に怒りを込めた熱弁を振るう]。彼らは冒涜・窃盗・拷問・誘拐・殺人・殺戮に何ら良心の呵責を感じない。それが自身にとっての最上の利益になると計算するならば、その時は何時でも彼らは法を破る。彼らは(馴染ぶかい人間の言葉に於けるところの)友情や忠誠を認識することも尊重することもない――何らかの努力によって他人を破ったり騙したりする人々に対する心からの親近感を除いて。成年の形態は明白に生殖を行わずに、その子孫の運命に対して何ら関心を示さない。
Orsinium
文字どおり、“Orsinium”は初期Aldmer語で「オークの街」を意味する。Orsiniumに住むゴブリン族(オーク、オーガ、クレムリン、その他の獣人)は彼らの居住地の名前としてそのエルフ風の物を好んでいる――少なくとも人間の耳にとっては、林立する猥雑で不潔な村や砦ではなく、壮麗で優美な要塞都市のように聞こえるからである。Camoran王朝の頃、Summerset
Islesの支配者から数百の獣人が解放されてValenwood北方の土地に居住を許可された、その際に建設された。これらのオークの諸部族は、High
RockのOld
H'roldan付近の無人の山岳地域を選択した――何故なら、それらの人々は、高々度の高山・準高山で取れる馬草〔まぐさ〕のみ食べる、珍しい尨毛〔むくげ〕の巨大ムカデの群獣に〔生活を〕依存していた(大半は未だそうである)からである。
HammerfellのRa Gadaの侵攻から逃亡してきたオークの難民が、当地に既に集結していた獣人の軍勢に参加した、その第1紀の頃、Orsiniumは相当の勢力を具えていた。この軍勢は、Bjoulsae河を支配するため、その定期的使用をOrsiniumに容認するようWayrest王国に強要することを決意した。その地域の他の諸勢力(主にYokudaのDiagna修道会と初期Daggerfallの族長王達)はオークに対抗するため蜂起した。Orsinium包囲は30年に亘り続き、その崩壊によって幕を閉じた。
OrsiniumはAkavirの〈有力者〉の下で短期間に帝国領となった――もっとも、これは共通紀元431年のSavirien-Chorakの死と共に終焉した。オークは、最近、〔以前と〕同様の地位を与えてくれるよう新皇帝に嘆願したが、彼らの種族に対するTiber Septimの憎悪は有名であり、その獣人に良い答えは未だ授けられていない。