Vanilla/Books/SKLxMysticism3 のバックアップ差分(No.1)

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邦題 黒き技の試み
原題 The Black Arts On Trial
著者 魔術師ギルドArchmagister、Hannibal Traven
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歴史
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一般に“黒き技”と呼ばれる屍術は、有史以前の時代に遡る歴史を持っている。事実、最初期の国々の在らゆる法律は、それに関して、死を苛む明確に禁止されるべきものとして言及している。しかしながら、その支配を逃れた“黒き技”の魔術の実践者は、その研究を続行したのである。
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我々の魔術師ギルドの前身であるArtaeum島のPsijic修道会もまた、その使用を禁止した。それは、危険であるからのみならず、聖なる/邪なる祖霊に関する彼らの信念がそれを異端としたからである。またもや、それにも関わらず、この制約を無視する〔Psijic修道会の〕多数の学生と師匠の話を我々は耳にしている。Vanus GalerionがArtaeumを立ち去る際は、彼は諸々の事柄に関してPsijicに賛同しなかったかも知れないが、彼もまたギルドに於ける屍術の講義を禁止したのである。
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Vanus Galerionの時代から約1100年の歳月が過ぎ去り、彼のギルドを数多のArchmagisterが率いてきた。屍術の問題は問われ続けてきた。それに対するギルド内の制約は決して除去されなかったが、それに対する態度は長年に亘って前後に変動してきた。その制約を完全に無視する傾向のArchmagisterも在れば、それを極めて活発に攻撃する者も在れば、更には、その他、彼ら自身が屍術師であると噂された者も在った。
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魔術師ギルドのArchmagisterたる私の新たな役割に於いて、この問題に関して自身の主義を据え置くことは責務である。“黒き技”に関する私自身の見解は存在するが、帝国の内で最も教養ある2名の魔術師、すなわち、CorinthのMagister Voth KarlyssとOrsiniumのMagister Ulliceta gra-Koggの助言を取り入れ、我々は2日間に亘って討論を重ねた。
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以下は、魔術師ギルドの屍術問題を解決に導く所の討論・主張・反論の、その重要な要点の要約である。
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主張
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gra-Kogg師の主張:屍術に関する理解は乏しい。我々は、それを無視することによって、それを消し去りたくない。魔術と科学の研究に貢献する知的機関として、我々は真理に対する責務を具えている。学術上の自己検閲は、中立性と客観性を重んじる我々の使命に矛盾するものである。
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Karlyss師の反論:魔術師ギルドは、知識の探求、および、賢明な注意と倫理的基準、両者の吊り合いを取らねばならない。学生が注意ぶかく健全な目的と共に進むようにすることは、彼の研究の方針に対する“検閲”ではない。規則と限界を据え置くことは、学生の自由に対する制約ではない――実際のところ、それは欠くべからざる存在である。
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Karlyss師の主張:屍術は文明世界の全土に於いて禁忌である。それを公的に容認するならば、魔術師ギルドは一般大衆の間に恐怖と反感を喚起するだろう。Vanus Galerionが欲したところは、この機関がPsijic修道会と異なり選民主義と分離主義によらないことであった。我々が公衆の見解を無視することは危険である。疑い無く、我々は多数の場所に於いて〔魔術師ギルドの〕設立認可を喪失するだろう――とりわけ、屍術に対する反感が極めて厳しいMorrowind全土に於いて。
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gra-Kogg師の反論:なるほど、我々は一般社会との関係に敏感であるべきだが、彼らは我々の研究に口を出すべきではなく、口を出してはならない。教養に欠ける多数の人々にとって、“屍術師”は単なる邪悪な魔術師を意味するものである。そのような偏見と半端な理解の故に我々の仕事を制限することは、それは狂気の沙汰である。ただ公衆の見解の故に〔屍術という〕或る主題を無視することは、それは客観的研究という目的に対する侮辱である。
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gra-Kogg師の主張:屍術師はTamrielに於ける災難である。単独で活動しようが、Sloadや〈芋虫の王〉Mannimarcoと協力して活動しようが、彼らは、数々の恐怖、すなわち、さまようゾンビや骸骨や、その他の類のアン・デッドの大元である。この脅威に打ち勝つため、我々は屍術師の力を知らねばならず、“黒き技”の研究を制約するならば、それを果たせないのである。
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Karlyss師の反論:誰しも、“黒き技”の脅威には疑義を挟まない――実際のところ、それこそ、「魔術師ギルドは一種のジャンルとして入門生に屍術を教授するべきである」という主張に対する私の反論の正しく要点である。我々の敵に何が可能であるのか、それを我々は知り得るし、また知るべきである。しかし、その者の手法を余りに深く覗き見て自身の手法としてしまう、という罠に踏み込むこと無いように我々は注意せねばならない。もしも邪悪な手法を研究して自身が邪悪となるならば、我々は誰に対しても何の利も与えないことになるのである。
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Karlyss師の主張:屍術は本来的に危険である。それを“かじる”ということは出来ない。最も単純な呪文でさえ流血を必要として、そして、詠唱者の魂を即座に蝕み始めるものである。これは憶測ではなく、単なる事実である。実践者と世界に対して恐怖と悲惨の他の何も与えないものであることが幾度も証明されている、そのような類の魔術をギルドが教授して、それ故、その研究を促進することになるのは無責任というものである。
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gra-Kogg師の反論:あらゆる魔術のジャンルは初心者にとって危険である。破壊魔法のジャンルの単純な火球の呪文でさえ、それが初心者によって放たれるならば、他の者のみならず魔術師自身にとっても大怪我を与え得る。神秘魔法のジャンルは、その正しく本質から、実践者が自身の精神から論理を切り離すように、そして、一時的狂気の類を受け取るように強制する。これを「ある者の魂を蝕むことに酷似している」と主張する者が在るかも知れない。
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gra-Kogg師の主張:ギルドは或る種の屍術を幾つか既に許可している。我々が知っているように、魔術の“ジャンル”とは、そもそもVanus Galerionによって組織化された人工的構造物であり、それは、研究を分割することによって単純化するためのものであった。それらは長年に亘って幾度も変遷してきたが、師匠の誰しも心得ているように、それらの何れも中心に於いて相互に関連しているのである。召喚魔法の学生が守護亡霊を召喚する際には、彼は屍術のジャンルに触れている。魔封術の学生が捕縛済の霊魂を使用する際には、彼もまた“黒き技”の罪を犯していると考えられるかも知れない。神秘魔法のジャンルもまた、前述のように、屍術に類似している。学生は屍術の手法を学んではならないと述べることは、もっと歴史的に正当である、その他のギルドのジャンルに於ける通常の技術を消し去ることである。
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Karlyss師の反論:なるほど、諸々のジャンルは連関しているが、その各々のジャンルの標準的呪文は時間の吟味を経てきた。適切に教育された神秘魔法の学生は、その〔神秘魔法の〕経験によって永遠に〔正気が〕損なわれるものではない、と我々は知っている。多数の観点に於いて、極論を言えば問題は存在する――どれだけ我々は研究の着手を容認するのか、ということに於いて。屍術とは、その本質から、実践者が知恵というより暗黒に突き進むことを基盤としており、実際のところ、それは彼の破滅を保証するものである。それは魔術師ギルドに余地を持たない。
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結論
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屍術の研究に於ける危険はその利便に優越する。ギルドは如何なる会員の研究であれ検閲を望まないが、“黒き技”の研究は容認しない――その邪悪な信奉者と闘争するという目的に資する制限付の形式のものを除いて。これは、私の特別の許可と監督の下に於いて、高度の技術と高度の注意を具えると証明された熟練魔術師によってのみ為されるものである。
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結語
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遺憾ながら、Ulliceta gra-Kogg師は屍術の擁護者というより屍術師であるという風聞の背後の、その事実を私は承認する。この露見に際して、〈ランプ騎士団〉はOrsiniumギルド会館に居た彼女の逮捕を試みたが、彼女は逃亡を果たした。我々はOrsiniumのMagister代理に全幅の信頼を寄せている。
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私は賛同しないが、彼女の論理的推論に充分に敬意を表して彼女の主張を本書に収録するが、これを削除するべき理由は私に見当たらない。しかしながら、“真理”に対する彼女の関心が、彼女が“黒き技”の虜〔とりこ〕に他ならないということの婉曲表現であると分かって失望である。
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この不運な状況は、まさしく、屍術の誘惑に対して、そして、我々の魔術師ギルドに於ける屍術実践者の浸透に対して、ギルド会員の注意と警戒が如何ほど重要であるのか、それを表し示すものである。


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