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**訳文 [#xbdf303f] // 注意:訳文の部分は中括弧({と})が原文部分と異なり4つづつ。 #pre{{{{ <font face=1><br> 「焔中舞踏」第二章<br> Waughin_Jarth著<br> <br> <IMG src="Book/fancy_font/c_59x61.dds" width=59 height=61>athay-Rahtは実際のところ、間の抜けた連中ではなかった。あの短い時間の間に、隊商にあった価値のあるものは、そのほとんどが略奪あるいは破壊されてしまっていた。ScottiがBosmerに売りつけようと思っていた木材も、燃えてしまったり、崖から落ちてしまったりしている。彼の服や契約書もぼろ切れになって、ワイン混じりのぬかるみに突っ込んでいる。周りの巡礼者や商人や冒険者は、みんな、口々に不満や嗚咽を上げながら、ようやく明けてきた空の明かりを頼りに、自分の荷物の切れ端を拾い集めていた。<br> <br> 「やれやれ、僕のノート、Mnoriadを翻訳したノートが無事だなんて、口が裂けても言えないね」Mallonが呟いた。「きっと、みんな、僕を逆恨みするに決まってるもの」<br> <br> 流石に失礼かと思って、「そんなものに興味は無いけどね」と言うのは避けたけれど。その代わりに、Scottiは財布の中身を確かめることにした。金貨、三十四枚。とてもじゃないが、新しく商売は起こせそうにない。<br> <br> 「おい!」林の方から怒鳴り声が上がった。茂みの中から姿を現したのはBosmer軍の小隊、革鎧に身を包んで武装している。「友軍か、敵軍か!?」<br> <br> 「いずれでもない!」護衛隊長が怒鳴り返した。<br> <br> 「ハッ、お前達はCyrodiilに違いないはずだ」骨張った体と狐のように狡猾な表情の若者が、笑いながら返した。どうやら、彼がその隊を率いているようだ。「我々は、お前達がこの道を使っていると聞いている。と言うことは、お前達が敵であることも明白な事実なのだ」<br> <br> 「戦争は終わったと思っていたのに」商売を台無しにされた誰かが、ぶつぶつと言った。<br> <br> それを聞いた小隊長が、またも笑って言う。「なに、これは戦争ではない。ちょっとした縄張り争いだよ。ところで、お前達はFalinestiまで行くのだろう?」<br> <br> 「いや」護衛隊長は手を振ってみせた。「私に関しては、ここで仕事は終わりさ。もう馬も無ければ隊商も無い、骨折り損のくたびれ儲けだ」<br> <br> それを聞いて、人々は彼の元に殺到した。口々に抗議や脅迫や嘆願の声を上げていたが、頑として、彼はValenwoodに足を踏み入れようとはしなかった。「平和な時代になるくらいだったら、」彼は言った。「むしろ、また戦争が起きればいいんだ」<br> <br> Scottiは、この小隊長のBosmerを別なやり方で「攻略」しようと試みた。威厳のある、しかし親しみ易い声で話しかけてみたのだ。これは、気難しい大工との交渉のときに、彼がよく使った手である。「きっと、貴方は私をFalinestiまで護衛しては下さらないでしょうね、それは分かっています。しかし、よく考えてみて下さい。私は、あの帝国が全幅の信頼を置くAtrius建設会社の代表者なのですよ。この地方では、先のKhajiitとの戦争のせいで、多くの建物を修復したり再建したりする必要があると聞いています。いかがなものでしょう?_その建設費用、私とのコネがあれば、大いに勉強させて頂きますよ。貴方にも、愛国心があるならば――」<br> <br> 「金貨二十枚、それで手を打とう。それと、お前は自分の所持品を持っていくか置いていくかしろ」彼は答えた。<br> <br> Scottiは安堵の溜息を漏らした。大工との交渉では、滅多に上手くいった試しが無かったのだ。<br> <br> こんな所で立ち往生してはたまらないと、一行の内、Scottiも含めて六人までは金貨を差し出した。そんな中、例の詩人は充分な金が無いようで、しきりにScottiに頼み込んできた。<br> <br> 「実にすまないんだけどね、私はあと十四枚しか持ってないんだ。これでは、Falinestiの良い宿に泊まることすら出来ないよ。できれば、君を助けたいんだけど」そう言って、Scottiは自分自身も説得した。ここで余分な金を使うわけにはいかないのだ。<br> <br> こうして、六人とBosmerの小隊は出発することになった。まず、岩がそこら中に突き出した道を通って、険しい崖を下る。次に、Valenwoodの深い森を、一時間ほど進んで行った。茶と緑の「天蓋」が一行を覆って、それは永遠に続くようである。一千年の長きに渡って生長してきた木々のおかげで、Valenwoodの森は栄養の溢れる豊かなものとなっていた。と言うのも、一行の足元を埋めている、その木々の落ち葉を分解しようと虫達が集まってくるからである。分解された落ち葉は地面の栄養となり、これによって再び木々が生長して、その果物などの恩恵を動物が受ける。そして、動物がいずれ死ねば、彼らも虫達によって分解される。こうして、Valenwoodの森は発展してきたのである。そんな森の中、数マイル続くぬかるみを渡ったり、地面に落ちた小枝やしな垂れかかってくる大枝のせいで迷路のようになってしまっている道を進んだりした。<br> <br> かなり長い時間が過ぎたが、先導役のBosmer達は全くスピードを落とそうとしないので、後ろのCyrodiil達は、彼らに置いていかれないようにするのに必死だった。赤ら顔で小柄な商人が、その短い足でもって腐った枝を踏んで転んでしまい、彼の仲間に助け起こされる一幕もあった。Bosmer達は、その進む動作は迅速であるのだが、その動作の前に一瞬だけ、絶えず頭上の木の影をじろりとねめつける仕草をするのである。<br> <br> 「奴らは何を気にしているんだろう?」怒気を孕んだ口調で、ぜいぜいと息を荒げながら、一人の商人が言った。「またCathay-Rahtの連中か?」<br> <br> 「馬鹿を言うな」Bosmerは笑って否定したが、その言葉は胡散臭いものだった。「Khajiitの住処とこのValenwoodがどれだけ離れているか知っているのか?この平和な時代に、あえて奴らがここまで出向くようなことは考えられないね」<br> <br> 少し嫌な匂いのする湿地を過ぎた頃、Scottiは猛烈な空腹感を感じた。彼はCyrodiilの慣習に従って一日に四度の食事をしていたが、こんなにも激しい運動にも関わらず、まだ食事を摂っていないのである。事務員の仕事に慣れ切ってしまっている彼の体では、とても付いていけたものではなかった。しかし、ちょっと気分が高揚しているせいか、「このジャングルの中をどれだけ駆けて行けるだろうか?」などと考えていた。「十二時間?二十時間?いや、時間は関係ないな」陽の光は厚く茂った葉々に遮られてしまい、一行を照らすのは、ポツポツとした光の点になってしまっている。そして、青がかった木漏れ日は、そのまま地面の上に差し込んで、幻想的な光の柱を成していた。<br> <br> 「ねぇ、少しは休憩を摂らないのですか!?」Scottiは叫んだ。と言うのも、彼の先導役はずっと前を歩いていたからである。<br> <br> 「Falinestiは近いぞ」返答がこだまして来た。「そこになら、食べ物がたくさんある」<br> <br> 更に、道は上りになって続いている。一行は、丸太がゴロゴロしている所を踏み越えたり、立ち並んだ木の枝を次々に登って行ったりしなければならなかった。それが数時間も続いた。長いカーブを抜けると、彼らは、自分達が巨大な滝の傍に着いたことを知った。それは百フィート(三十メートル)かそれ以上の高さを持ち、滝の中腹に居る彼らにも、水の落ちる轟音は聞き取れた。「この滝の上まで行くぞ」Bosmerの一人が、滝に沿った岩場を示した。もはや、誰も文句を言う気力は失せていた。ただ、積み重なった岩の上に、一歩一歩、自分の足を重ねていくだけである。先導役を霧の中に見失っても、足を置くべき岩が無くなるまで、Scottiは歩みを止めなかった。ようやく足を止めたあと、彼は、自分の汗と顔にかかった滝のしぶきを拭った。<br> <br> Falinestiは、彼の眼前、地平線をまたぐように広がっていた。壮大なgraht-oak市が、河の両岸を越えて、その四肢を伸ばしている。その都市には背丈の低い木々が密集した木立や果樹園が隣接しており、風が吹き過ぎると、国王の前で家臣が嘆願する時のように、木々も頭を垂れるのだった。よくよく見ると、都市に沿って生えている木々は、ちょっと風変わりなものだった。節くれ立ってねじ曲がっている上に、天辺は美麗な金と緑に染まっており、蔓が垂れ下がって樹液が陽の光に輝いている。高さは一マイル(千六百メートル)幅はその半分、これほど壮大な存在を、Scottiは今まで見たことが無かった。もしも彼が事務員でも強烈な空腹を抱えてもいなければ、何か一曲、唄でも歌いたい気分だった。<br> <br> 「なんだ、そこにいたのか」いつの間にか、先導役のリーダーと彼の仲間が傍に立っていた。「あまり遠くへ行くんじゃないぞ。今が冬で助かったな。これが夏だったら、お前、街のずっと南の端の方まで行ってただろう?」"<br> <br> 実際のところ、彼は迷子になってしまっていた。こうして背丈の高い木々に囲まれて蟻のようにさまよっていると、すっかり方向感覚を失ってしまうのだ。<br> <br> 「あの、こんな名前の宿を、」と言いかけてから、Jurusからの手紙をポケットから取り出すと、「『Paskos母さんの酒場』とか言うんですけど?」<br> <br> 「Pascost母さん?」彼は、親しげな、しかし嘲るような笑い声で返した。「あそこは止めときな、きっと気に入らないぜ。俺だったら、木の上にあるAysiaホールを薦めるね。高い金とるけど、良いところさ<br> <br> 「そこで、人と待ち合わせしているんです」<br> <br> 「ふん、そう決まってるなら、Havel_Slumpに行って、そこ行きのリフトに乗せてもらうんだな。いいか、迷子になってWestern_Crossで居眠してたりするなよ、絶対に」<br> <br> それが最高のジョークであるかのように、この粗暴で年若いScottiの友人達は、彼がFalinestiに張り巡らされた曲がりくねった道を歩いていく背後から爆笑を浴びせたのだった。地面は落ち葉やがらくたで汚れており、時々、頭の上からガラスや骨が落ちて来る始末だった。そのため、彼は絶えずキョロキョロと辺りを見回していなければならなかった。リフト乗り場は、他のリフトが集まる所であるため、非常に入り組んでいた。また、この乗り場は太いブドウの木に固定されており、どうやら、上下にスライドするようだ。これに乗って行けば、街の中心地まで優雅な空中散歩を楽しめるという寸法だ。ただし、人力であるらしい。雄牛の腹ほどもある腕をした男が乗り込んでおり、どうやら彼が操作するようである。Scottiは手近なリフトに乗り込むと、ガラス製のパイプで煙草をふかし始めた。<br> <br> 「Havel_Slumpにまで行きたいんですけど、お願い出来ますか?」と、その運搬夫に話しかける。<br> <br> 彼は頷いてみせた。その数分後、Scottiは二百フィート(六十メートル)の高みに在った。見ると、このリフトを挟むようにして二本の太い枝があり、これを吊るしているからであろう、二本ともが重みでたわんでいる。不規則に木の股に巻き付いて茂っているコケは、木の上に立てられた数ダースの小さな家々にとっての屋根のようである。リフトからはほんの少しの小道しか見当たらなかったものの、その向こうからは、人々の話し声や街の物音、それに音楽も聞こえてくる。Falinesti駅に到着すると、運搬夫にチップを渡して、Pascost母さんの酒場の場所を尋ねてみた。<br> <br> 「よろしいですか、高貴なる御方?ここから、真っ直ぐ、進んで行きなさいませ。きっと、何も見つからないでしょうけど」そう言ってひとしきり腹を抱えて笑ってから、やっと真面目に答える気になったらしい。「MorndasにはHavel_Slumpん所のみんなが『どんちゃん騒ぎ』の真っ最中だぜ。あんたも楽しんでったらどうだい?」<br> <br> それからScottiは狭い道を抜けて行ったが、それには、かなりの注意が必要だった。と言うのも、道の歩き心地は大理石で出来た帝都の大通りにも似ているけれど、所々に、遥か下を流れている河まで真っさ逆様の亀裂が走っていたからである。彼は、ちょっと腰を下ろして休憩を取ると、この高みから下を見下ろしてみた。今日は快晴であるのだろう、実に素晴らしい眺めではあったものの、すぐに縮こまってしまい、じっと見てはいられなかった。「ん?」地上から目を離そうとしたとき、彼は少し不思議なものを見たような気がして、もう一度、下界を覗き込んでみた。河には小さな筏(いかだ)が浮いていて、数インチ(一インチは三センチ)ずつ動いているようだった。だが、よく見ると、その筏は明らかに岸に固定されているのだ。「んん?」彼は、ようやく違和感の源に至った。比喩でも何でもなく、あの筏が動いているのではなく、このFalinesti自身が動いているのだ。しかも、急激なスピードで。<br> <br> そこまで考えてから、ようやく彼は顔を上げると、歩みを進めることにした。と、向こうの曲がり角の方から、何かの煙が漂って来るのが目に飛び込んできた。「ローストビーフ!しかも、とびきり美味い奴だ」その煙の匂いは、彼の空腹を思い出せるのにも、そして、どれだけ危険な所に居るのかを忘れさせるのにも充分だった。さっきの恐怖も放り出して、彼は駆けて行った。<br> <br> 運搬夫が言っていた「どんちゃん騒ぎ」は、その曲がり角の向こう、どんな街の広場にも引けを取らない位に広大なリフト乗り場で繰り広げられていた。見渡す限り、Scottiが圧倒されてしまうような出で立ちの人々がひしめき合って、飲めや歌えの大騒ぎである。リュート弾きも居れば、そのリズムに合わせて踊る人々、更には、ちょっと高くなった所にステージが設えられて、そこで歌っている者もあるくらいだった。彼らのほとんどは、色鮮やかな革や骨で着飾ったBosmerだったが、中にはOrcの姿も見受けられた。彼らOrcは、人々の間を駆け回っては、踊り散らしたり怒鳴ってみせたりと、全く粗暴な連中であった。また、最初は背の高いBosmerかと思ったが、よく見ると、髪を短く切ったケンタウロスも少し居るようだった。<br> <br> 「えー、羊の肉は要らんかえー」しわくちゃな顔の老人が、熱く焼けた石の上で巨大な羊を焼いている。<br> <br> 早速、Scottiは美味そうに焼けた足に噛り付くと、立て続けに、もう一本にもむしゃぶり付いた。喉に詰まった軟骨を、彼の様子にクスクスと笑う売り子を横目で見ながら、手近な白く泡立ったジョッキの中身で飲み込む。その液体は、彼の五臓六腑に染み渡った。<br> <br> 「何です、これは?」<br> <br> 「Jaggaさ。豚のお乳を発酵させたもんさね。どうだい、大瓶で一杯?それに、羊の肉の方も、もう少しどうかね?」<br> <br> また金を幾らか払うと、羊の足を齧りつつ、Jaggaの大瓶を傾けつつ、彼は人ごみの中に入って行った。そして、ここValenwoodまで彼を呼び出したJurusを行き交う人々に探していたのだが、どうにも見つからない。大瓶を四分の一まで空けたところで、彼は人探しを止めることにした。半分まで空けたところで、これからの事は脇にどけて、ダンスの輪に加わった。四分の三まで空けたところで、言葉がさっぱり通じない相手とジョークを交わした。全て飲み終わったところで、彼は仰向けになっていびきをかき始めた。それでも、「どんちゃん騒ぎ」は続く。<br> <br> 翌朝、誰かにキスされているような感覚で目が覚めた。しっかり目は開いていないものの、そのご好意の主に向かって顔を近付けた途端、胸に焼け付くような痛みを受けて叩き起こされた。彼の眼前に居たのは、子牛ほどもある昆虫だった。それは、Scottiを叩き潰そうと棘のびっしり生えた強靭な脚で彼を組み敷くと、刀剣が円状に生えたような口でもって彼のシャツを引き千切ろうとしているのだった。泣き叫びながら必死で手足をばたつかせるも、とてもではないが、敵いそうな相手ではない。「さぁ、食事の時間だ」そんなことでも思っているのか、その昆虫の力はより強まるばかりである。<br> <br> 「もう終わりだ」一方、彼は投げやりにそんなことを考えていた。「もう故郷に帰ることも出来ない。あぁ、帝都に残っているべきだったんだ。きっと、Vanechのところで雇ってもらえただろうに。そうして、一からやり直せば良かったんだ。それなのに……」<br> <br> ――と、唐突にそれの顎の力が弱まる。かと思うと、一度だけ体をぶるっと震わせると、次の瞬間、胆汁を撒き散らして死んでしまった。<br> <br> 「よし!」叫び声が聞こえた。そう遠くない。<br> <br> 何が起こったのか分からないScottiは、まだ横たわったままだった。彼の胸は焼けただれ、動悸は耳元でうるさい。寝転んだままの視界の隅で捕らえられたのは、こちらに突進してくる身の毛もよだつ怪物だった。慌てて安全な場所へ這って行こうとしたところへ、鋭く風を切る音。振り向くと、その怪物に矢が深々と突き立っている。<br> <br> 「当たり!」さっきとは別な声。「おい、最初のがまだ生きてるぞ、ちょっと動いたんだ」<br> <br> 今度は、クロスボウのボルトが風を切って、それは彼の上に被さっている死骸に命中した。「自分まで串刺しにされてはかなわない」と必死で声を上げてみるものの、どうやら、このでかぶつのせいで声はくぐもってしまっているみたいだ。用心してこの下から這い出そうとしたが、その動作は、射手達に怪物の生存を確信させるものに過ぎなかったようだ。結果、矢の嵐が彼の上を吹き荒れることになる。今や、標的はぼろくずのようになって、彼は死骸から溢れ出る血の海に漂っていた。<br> <br> Scottiがまだ若かった頃、あまり「模擬戦闘」についてよく知らなかった頃、そのスポーツを観るために帝都の闘技場にしばしば足を運んでいた。そんなとき、彼は、ベテランの戦士に戦闘の秘訣を尋ねたことがある。「そう、『秘密だぜ』って言って教えてくれたんだ」と彼は思い出す。「『何をすべきか分からないなら、とりあえず盾の後ろに隠れとけ』ってね」<br> <br> Scottiはその忠告に従うことにした。一時間後、すっかり物音も無くなったところで、忌々しい虫の「残り物」を投げ棄てると、彼は出来るだけ速く立ち上がった。が、少し遅かったようだ。八人の狼藉者は、既にピタリと彼に向けて照準を合わして、いつでも発射できる状態だ。<br> <br> 「……あ?」ようやく、その中の一人が彼の姿を認めたようだ。そして、急に腹を折って笑い出した。「おいおいおいおい、『Western_Crossでは居眠りするな』って言ってくれる心優しい奴は居なかったのか?あんたが酔っ払ってえさになっているのに、どうやってHoarvorを撲滅しろってんだ?<br> <br> Scottiは頭を振り振り、リフト乗り場沿いの道を引き返して行った。そして、一つ角を曲がって、ようやくHavel_Slumpに到着した。彼は、血塗れで服もぼろぼろで疲れきっていて豚の乳の発酵品も飲み過ぎだったから、すぐにでも横になってしまいたかった。だから、「Pascost母さんの酒場」に足を踏み入れた時は、その酒場は湿っぽくて樹液でぬめっていてカビ臭かったけれど、心の底から安心したものだった。<br> <br> 「Decumus_Scottiと言います」彼は名乗った。「ここにJurusという人が居るはずなんですけど?」<br> <br> 「Decumus_Scottiだって?」肉付きのいい女主人――彼女こそ、Pascost母さんその人だ――は、頭をひねらせているようだった。「その名前、聞いたことがあるね。そうだ、Jurusからの書置きがあるはずだ。ちょっと取って来るからね」<br> <br> 訳注:hoarvorの意味が不明であったため、訳出せずにおいた。恐らく、昆虫様の怪物の名称であろう。 }}}}
//=================================== // Format_ver:0.0.1 (2008-01-01) // // 【解説】 // ・この部分は書物翻訳時に自動的に読み込まれるテンプレート記載のヘッダです。 // ・翻訳ページ作成時も削除しない事を推奨します // // 【記述ガイド】 // ・#preの後の中括弧({と})のセット間に原文/訳文をタグが付いたまま // コピペすると編集上も表示上も便利です // // 【注意】 // ・本文部分を囲む#pre記述ですが、原文と訳文を囲む中括弧は // 『原文は3つづつ、訳文は4つづつ』 // になっている事に注意して下さい。これはMod作成時に // 正規表現で本文(訳文)を抽出するのに便利故です。 // ・訳文で半角スペースを表現したいときはアンダースコア(_)に置き換えてください // ・半角スペースを記述するとそこで改行扱いになるので注意して下さい // ・新しい訳を行う場合は古い訳の下に同じ書式で加えていくようにして下さい // ・翻訳未完時は、 【訳文記述エリア】 という文字列を残して置いて下さい(プログラム処理用) //=================================== *題名 [#m2ffd5e0] **原題 [#lca2e323] -A Dance in Fire, v2 **訳題 [#i63b81dc] -【訳題記述エリア】 *本文 [#d4da6b3f] **原文 [#vc7faa75] // 注意:訳文の部分は中括弧({と})が3つづつ。 #pre{{{ <font face=1><br> A Dance in Fire, Chapter 2 <br> by Waughin Jarth<br> <br> <IMG src="Book/fancy_font/i_51x61.dds" width=51 height=61>t was a complete loss. The Cathay-Raht had stolen or destroyed almost every item of value in the caravan in just a few minutes' time. Decumus Scotti's wagonload of wood he had hoped to trade with the Bosmer had been set on fire and then toppled off the bluff. His clothing and contracts were tattered and ground into the mud of dirt mixed with spilt wine. All the pilgrims, merchants, and adventurers in the group moaned and wept as they gathered the remnants of their belongings by the rising sun of the dawn.<br> <br> "I best not tell anyone that I managed to hold onto my notes for my translation of the Mnoriad Pley Bar," whispered the poet Gryf Mallon. "They'd probably turn on me."<br> <br> Scotti politely declined the opportunity of telling Mallon just how little value he himself placed on the man's property. Instead, he counted the coins in his purse. Thirty-four gold pieces. Very little indeed for an entrepreneur beginning a new business.<br> <br> "Hoy!" came a cry from the wood. A small party of Bosmer emerged from the thicket, clad in leather mail and bearing arms. "Friend or foe?"<br> <br> "Neither," growled the convoy head.<br> <br> "You must be the Cyrodiils," laughed the leader of the group, a tall skeleton-thin youth with a sharp vulpine face. "We heard you were en route. Evidently, so did our enemies."<br> <br> "I thought the war was over," muttered one of the caravan's now ruined merchants.<br> <br> The Bosmer laughed again: "No act of war. Just a little border enterprise. You are going on to Falinesti?"<br> <br> "I'm not," the convoy head shook his head. "As far as I'm concerned, my duty is done. No more horses, no more caravan. Just a fat profit loss to me."<br> <br> The men and women crowded around the man, protesting, threatening, begging, but he refused to step foot in Valenwood. If these were the new times of peace, he said, he'd rather come back for the next war.<br> <br> Scotti tried a different route and approached the Bosmer. He spoke with an authoritative but friendly voice, the kind he used in negotiations with peevish carpenters: "I don't suppose you'd consider escorting me to Falinesti. I'm a representative for an important Imperial agency, the Atrius Building Commission, here to help repair and alleviate some of the problems the war with the Khajiit brought to your province. Patriotism --"<br> <br> "Twenty gold pieces, and you must carry your own gear if you have any left," replied the Bosmer.<br> <br> Scotti reflected that negotiations with peevish carpenters rarely went his way either.<br> <br> Six eager people had enough gold on them for payment. Among those without funds was the poet, who appealed to Scotti for assistance.<br> <br> "I'm sorry, Gryf, I only have fourteen gold left over. Not even enough for a decent room when I get to Falinesti. I really would help you if I could," said Scotti, persuading himself that it was true.<br> <br> The band of six and their Bosmer escorts began the descent down a rocky path along the bluff. Within an hour's time, they were deep in the jungles of Valenwood. A never-ending canopy of hues of browns and greens obscured the sky. A millennia's worth of fallen leaves formed a deep, wormy sea of putrefaction beneath their feet. Several miles were crossed wading through the slime. For several more, they took a labyrinthian path across fallen branches and the low-hanging boughs of giant trees. <br> <br> All the while, hour after hour, the inexhaustible Bosmer host moved so fast, the Cyrodiils struggled to keep from being left behind. A red-faced little merchant with short legs took a bad step on a rotten branch and nearly fell. His fellow provincials had to help him up. The Bosmer paused only a moment, their eyes continually darting to the shadows in the trees above before moving on at their usual expeditious pace.<br> <br> "What are they so nervous about?" wheezed the merchant irritably. "More Cathay-Raht?"<br> <br> "Don't be ridiculous," laughed the Bosmer unconvincingly. "Khajiiti this far into Valenwood? In times of peace? They'd never dare."<br> <br> When the group passed high enough above the swamp that the smell was somewhat dissipated, Scotti felt a sudden pang of hunger. He was used to four meals a day in the Cyrodilic custom. Hours of nonstop exertion without food was not part of his regimen as a comfortably paid clerk. He pondered, feeling somewhat delirious, how long they had been trotting through the jungle. Twelve hours? Twenty? A week? Time was meaningless. Sunlight was only sporadic through the vegetative ceiling. Phosphorescent molds on the trees and in the muck below provided the only regular illumination.<br> <br> "Is it at all possible for us to rest and eat?" he hollered to his host up ahead.<br> <br> "We're near to Falinesti," came the echoing reply. "Lots of food there."<br> <br> The path continued upward for several hours more across a clot of fallen logs, rising up to the first and then the second boughs of the tree line. As they rounded a long corner, the travelers found themselves midway up a waterfall that fell a hundred feet or more. No one had the energy to complain as they began pulling up the stacks of rock, agonizing foot by foot. The Bosmer escorts disappeared into the mist, but Scotti kept climbing until there was no more rock left. He wiped the sweat and river water from his eyes.<br> <br> Falinesti spread across the horizon before him. Sprawling across both banks of the river stood the mighty graht-oak city, with groves and orchards of lesser trees crowding it like supplicants before their king. At a lesser scale, the tree that formed the moving city would have been extraordinary: gnarled and twisted with a gorgeous crown of gold and green, dripping with vines and shining with sap. At a mile tall and half as wide, it was the most magnificent thing Scotti had ever seen. If he had not been a starving man with the soul of a clerk, he would have sung.<br> <br> "There you are," said the leader of the escorts. "Not too far a walk. You should be glad it's wintertide. In summertide, the city's on the far south end of the province."<br> <br> Scotti was lost as to how to proceed. The sight of the vertical metropolis where people moved about like ants disoriented all his sensibilities.<br> <br> "You wouldn't know of an inn called," he paused for a moment, and then pulled Jurus's letter from his pocket. "Something like 'Mother Paskos Tavern'?"<br> <br> "Mother Pascost?" the lead Bosmer laughed his familiar contemptuous laugh. "You won't want to stay there? Visitors always prefer the Aysia Hall in the top boughs. It's expensive, but very nice."<br> <br> "I'm meeting someone at Mother Pascost's Tavern."<br> <br> "If you've made up your mind to go, take a lift to Havel Slump and ask for directions there. Just don't get lost and fall asleep in the western cross."<br> <br> This apparently struck the youth's friends as a very witty jest, and so it was with their laughter echoing behind him that Scotti crossed the writhing root system to the base of Falinesti. The ground was littered with leaves and refuse, and from moment to moment a glass or a bone would plummet from far above, so he walked with his neck crooked to have warning. An intricate network of platforms anchored to thick vines slipped up and down the slick trunk of the city with perfect grace, manned by operators with arms as thick as an ox's belly. Scotti approaches the nearest fellow at one of the platforms, who was idly smoking from a glass pipe.<br> <br> "I was wondering if you might take me to Havel Slump."<br> <br> The mer nodded and within a few minutes time, Scotti was two hundred feet in the air at a crook between two mighty branches. Curled webs of moss stretched unevenly across the fork, forming a sharing roof for several dozen small buildings. There were only a few souls in the alley, but around the bend ahead, he could hear the sound of music and people. Scotti tipped the Falinesti Platform Ferryman a gold piece and asked for the location of Mother Pascost's Tavern.<br> <br> "Straight ahead of you, sir, but you won't find anyone there," the Ferryman explained, pointing in the direction of the noise. "Morndas everyone in Havel Slump has revelry."<br> <br> Scotti walked carefully along the narrow street. Though the ground felt as solid as the marble avenues of the Imperial City, there were slick cracks in the bark that exposed fatal drops into the river. He took a moment to sit down, to rest and get used to the view from the heights. It was a beautiful day for certain, but it took Scotti only a few minutes of contemplation to rise up in alarm. A jolly little raft anchored down stream below him had distinctly moved several inches while he watched it. But it hadn't moved at all. He had. Together with everything around him. It was no metaphor: the city of Falinesti walked. And, considering its size, it moved quickly.<br> <br> Scotti rose to his feet and into a cloud of smoke that drifted out from around the bend. It was the most delicious roast he had ever smelled. The clerk forgot his fear and ran.<br> <br> The "revelry" as the Ferryman had termed it took place on an enormous platform tied to the tree, wide enough to be a plaza in any other city. A fantastic assortment of the most amazing people Scotti had ever seen were jammed shoulder-to-shoulder together, many eating, many more drinking, and some dancing to a lutist and singer perched on an offshoot above the crowd. They were largely Bosmer, true natives clad in colorful leather and bones, with a close minority of orcs. Whirling through the throng, dancing and bellowing at one another were a hideous ape people. A few heads bobbing over the tops of the crowd belonged not, as Scotti first assumed, to very tall people, but to a family of centaurs.<br> <br> "Care for some mutton?" queried a wizened old mer who roasted an enormous beast on some red-hot rocks. <br> <br> Scotti quickly paid him a gold piece and devoured the leg he was given. And then another gold piece and another leg. The fellow chuckled when Scotti began choking on a piece of gristle, and handed him a mug of a frothing white drink. He drank it and felt a quiver run through his body as if he were being tickled.<br> <br> "What is that?" Scotti asked.<br> <br> "Jagga. Fermented pig's milk. I can let you have a flagon of it and a bit more mutton for another gold."<br> <br> Scotti agreed, paid, gobbled down the meat, and took the flagon with him as he slipped into the crowd. His co-worker Liodes Jurus, the man who had told him to come to Valenwood, was nowhere to be seen. When the flagon was a quarter empty, Scotti stopped looking for Jurus. When it was half empty, he was dancing with the group, oblivious to the broken planks and gaps in the fencework. At three quarters empty, he was trading jokes with a group of creatures whose language was completely alien to him. By the time the flagon was completely drained, he was asleep, snoring, while the revelry continued on all around his supine body.<br> <br> The next morning, still asleep, Scotti had the sensation of someone kissing him. He made a face to return the favor, but a pain like fire spread through his chest and forced him to open his eyes. There was an insect the size of a large calf sitting on him, crushing him, its spiky legs holding him down while a central spiral-bladed vortex of a mouth tore through his shirt. He screamed and thrashed but the beast was too strong. It had found its meal and it was going to finish it.<br> <br> It's over, thought Scotti wildly, I should have never left home. I could have stayed in the City, and perhaps found work with Lord Vanech. I could have begun again as a junior clerk and worked my way back up.<br> <br> Suddenly the mouth released itself. The creature shivered once, expelled a burst of yellow bile, and died. <br> <br> "Got one!" cried a voice, not too distantly.<br> <br> For a moment, Scotti lay still. His head throbbed and his chest burned. Out of the corner of his eye he saw movement. Another of the horrible monsters was scurried towards him. He scrambled, trying to push himself free, but before he could come out, there was a sound of a bow cracking and an arrow pierced the second insect.<br> <br> "Good shot!" cried another voice. "Get the first one again! I just saw it move a little!"<br> <br> This time, Scotti felt the impact of the bolt hit the carcass. He cried out, but he could hear how muffled his voice was by the beetle's body. Cautiously, he tried sliding a foot out and rolling under, but the movement apparently had the effect of convincing the archers that the creature still lived. A volley of arrows was launched forth. Now the beast was sufficiently perforated so pools of its blood, and likely the blood of its victims, began to seep out onto Scotti's body.<br> <br> When Scotti was a lad, before he grew too sophisticated for such sports, he had often gone to the Imperial Arena for the competitions of war. He recalled a great veteran of the fights, when asked, telling him his secret, "Whenever I'm in doubt of what to do, and I have a shield, I stay behind it."<br> <br> Scotti followed that advice. After an hour, when he no longer heard arrows being fired, he threw aside the remains of the bug and leapt as quickly as he could to a stand. It was not a moment too soon. A gang of eight archers had their bows pointing his direction, ready to fire. When they saw him, they laughed.<br> <br> "Didn't anyone ever tell you not to sleep in the western cross? How're we going to exterminate all the hoarvors if you drunks keep feeding 'em?"<br> <br> Scotti shook his head and walked back along the platform, round the bend, to Havel Slump. He was bloodied and torn and tired and he had far too much fermented pig's milk. All he wanted was a proper place to lie down. He stepped into Mother Pascost's Tavern, a dank place, wet with sap, smelling of mildew.<br> <br> "My name is Decumus Scotti," he said. "I was hoping you have someone named Jurus staying here."<br> <br> "Decumus Scotti?" pondered the fleshy proprietress, Mother Pascost herself. "I've heard that name. Oh, you must be the fellow he left the note for. Let me go see if I can find it." <br> <br> }}} **訳文 [#xbdf303f] // 注意:訳文の部分は中括弧({と})が原文部分と異なり4つづつ。 #pre{{{{ <font face=1><br> 「焔中舞踏」第二章<br> Waughin_Jarth著<br> <br> <IMG src="Book/fancy_font/c_59x61.dds" width=59 height=61>athay-Rahtは実際のところ、間の抜けた連中ではなかった。あの短い時間の間に、隊商にあった価値のあるものは、そのほとんどが略奪あるいは破壊されてしまっていた。ScottiがBosmerに売りつけようと思っていた木材も、燃えてしまったり、崖から落ちてしまったりしている。彼の服や契約書もぼろ切れになって、ワイン混じりのぬかるみに突っ込んでいる。周りの巡礼者や商人や冒険者は、みんな、口々に不満や嗚咽を上げながら、ようやく明けてきた空の明かりを頼りに、自分の荷物の切れ端を拾い集めていた。<br> <br> 「やれやれ、僕のノート、Mnoriadを翻訳したノートが無事だなんて、口が裂けても言えないね」Mallonが呟いた。「きっと、みんな、僕を逆恨みするに決まってるもの」<br> <br> 流石に失礼かと思って、「そんなものに興味は無いけどね」と言うのは避けたけれど。その代わりに、Scottiは財布の中身を確かめることにした。金貨、三十四枚。とてもじゃないが、新しく商売は起こせそうにない。<br> <br> 「おい!」林の方から怒鳴り声が上がった。茂みの中から姿を現したのはBosmer軍の小隊、革鎧に身を包んで武装している。「友軍か、敵軍か!?」<br> <br> 「いずれでもない!」護衛隊長が怒鳴り返した。<br> <br> 「ハッ、お前達はCyrodiilに違いないはずだ」骨張った体と狐のように狡猾な表情の若者が、笑いながら返した。どうやら、彼がその隊を率いているようだ。「我々は、お前達がこの道を使っていると聞いている。と言うことは、お前達が敵であることも明白な事実なのだ」<br> <br> 「戦争は終わったと思っていたのに」商売を台無しにされた誰かが、ぶつぶつと言った。<br> <br> それを聞いた小隊長が、またも笑って言う。「なに、これは戦争ではない。ちょっとした縄張り争いだよ。ところで、お前達はFalinestiまで行くのだろう?」<br> <br> 「いや」護衛隊長は手を振ってみせた。「私に関しては、ここで仕事は終わりさ。もう馬も無ければ隊商も無い、骨折り損のくたびれ儲けだ」<br> <br> それを聞いて、人々は彼の元に殺到した。口々に抗議や脅迫や嘆願の声を上げていたが、頑として、彼はValenwoodに足を踏み入れようとはしなかった。「平和な時代になるくらいだったら、」彼は言った。「むしろ、また戦争が起きればいいんだ」<br> <br> Scottiは、この小隊長のBosmerを別なやり方で「攻略」しようと試みた。威厳のある、しかし親しみ易い声で話しかけてみたのだ。これは、気難しい大工との交渉のときに、彼がよく使った手である。「きっと、貴方は私をFalinestiまで護衛しては下さらないでしょうね、それは分かっています。しかし、よく考えてみて下さい。私は、あの帝国が全幅の信頼を置くAtrius建設会社の代表者なのですよ。この地方では、先のKhajiitとの戦争のせいで、多くの建物を修復したり再建したりする必要があると聞いています。いかがなものでしょう?_その建設費用、私とのコネがあれば、大いに勉強させて頂きますよ。貴方にも、愛国心があるならば――」<br> <br> 「金貨二十枚、それで手を打とう。それと、お前は自分の所持品を持っていくか置いていくかしろ」彼は答えた。<br> <br> Scottiは安堵の溜息を漏らした。大工との交渉では、滅多に上手くいった試しが無かったのだ。<br> <br> こんな所で立ち往生してはたまらないと、一行の内、Scottiも含めて六人までは金貨を差し出した。そんな中、例の詩人は充分な金が無いようで、しきりにScottiに頼み込んできた。<br> <br> 「実にすまないんだけどね、私はあと十四枚しか持ってないんだ。これでは、Falinestiの良い宿に泊まることすら出来ないよ。できれば、君を助けたいんだけど」そう言って、Scottiは自分自身も説得した。ここで余分な金を使うわけにはいかないのだ。<br> <br> こうして、六人とBosmerの小隊は出発することになった。まず、岩がそこら中に突き出した道を通って、険しい崖を下る。次に、Valenwoodの深い森を、一時間ほど進んで行った。茶と緑の「天蓋」が一行を覆って、それは永遠に続くようである。一千年の長きに渡って生長してきた木々のおかげで、Valenwoodの森は栄養の溢れる豊かなものとなっていた。と言うのも、一行の足元を埋めている、その木々の落ち葉を分解しようと虫達が集まってくるからである。分解された落ち葉は地面の栄養となり、これによって再び木々が生長して、その果物などの恩恵を動物が受ける。そして、動物がいずれ死ねば、彼らも虫達によって分解される。こうして、Valenwoodの森は発展してきたのである。そんな森の中、数マイル続くぬかるみを渡ったり、地面に落ちた小枝やしな垂れかかってくる大枝のせいで迷路のようになってしまっている道を進んだりした。<br> <br> かなり長い時間が過ぎたが、先導役のBosmer達は全くスピードを落とそうとしないので、後ろのCyrodiil達は、彼らに置いていかれないようにするのに必死だった。赤ら顔で小柄な商人が、その短い足でもって腐った枝を踏んで転んでしまい、彼の仲間に助け起こされる一幕もあった。Bosmer達は、その進む動作は迅速であるのだが、その動作の前に一瞬だけ、絶えず頭上の木の影をじろりとねめつける仕草をするのである。<br> <br> 「奴らは何を気にしているんだろう?」怒気を孕んだ口調で、ぜいぜいと息を荒げながら、一人の商人が言った。「またCathay-Rahtの連中か?」<br> <br> 「馬鹿を言うな」Bosmerは笑って否定したが、その言葉は胡散臭いものだった。「Khajiitの住処とこのValenwoodがどれだけ離れているか知っているのか?この平和な時代に、あえて奴らがここまで出向くようなことは考えられないね」<br> <br> 少し嫌な匂いのする湿地を過ぎた頃、Scottiは猛烈な空腹感を感じた。彼はCyrodiilの慣習に従って一日に四度の食事をしていたが、こんなにも激しい運動にも関わらず、まだ食事を摂っていないのである。事務員の仕事に慣れ切ってしまっている彼の体では、とても付いていけたものではなかった。しかし、ちょっと気分が高揚しているせいか、「このジャングルの中をどれだけ駆けて行けるだろうか?」などと考えていた。「十二時間?二十時間?いや、時間は関係ないな」陽の光は厚く茂った葉々に遮られてしまい、一行を照らすのは、ポツポツとした光の点になってしまっている。そして、青がかった木漏れ日は、そのまま地面の上に差し込んで、幻想的な光の柱を成していた。<br> <br> 「ねぇ、少しは休憩を摂らないのですか!?」Scottiは叫んだ。と言うのも、彼の先導役はずっと前を歩いていたからである。<br> <br> 「Falinestiは近いぞ」返答がこだまして来た。「そこになら、食べ物がたくさんある」<br> <br> 更に、道は上りになって続いている。一行は、丸太がゴロゴロしている所を踏み越えたり、立ち並んだ木の枝を次々に登って行ったりしなければならなかった。それが数時間も続いた。長いカーブを抜けると、彼らは、自分達が巨大な滝の傍に着いたことを知った。それは百フィート(三十メートル)かそれ以上の高さを持ち、滝の中腹に居る彼らにも、水の落ちる轟音は聞き取れた。「この滝の上まで行くぞ」Bosmerの一人が、滝に沿った岩場を示した。もはや、誰も文句を言う気力は失せていた。ただ、積み重なった岩の上に、一歩一歩、自分の足を重ねていくだけである。先導役を霧の中に見失っても、足を置くべき岩が無くなるまで、Scottiは歩みを止めなかった。ようやく足を止めたあと、彼は、自分の汗と顔にかかった滝のしぶきを拭った。<br> <br> Falinestiは、彼の眼前、地平線をまたぐように広がっていた。壮大なgraht-oak市が、河の両岸を越えて、その四肢を伸ばしている。その都市には背丈の低い木々が密集した木立や果樹園が隣接しており、風が吹き過ぎると、国王の前で家臣が嘆願する時のように、木々も頭を垂れるのだった。よくよく見ると、都市に沿って生えている木々は、ちょっと風変わりなものだった。節くれ立ってねじ曲がっている上に、天辺は美麗な金と緑に染まっており、蔓が垂れ下がって樹液が陽の光に輝いている。高さは一マイル(千六百メートル)幅はその半分、これほど壮大な存在を、Scottiは今まで見たことが無かった。もしも彼が事務員でも強烈な空腹を抱えてもいなければ、何か一曲、唄でも歌いたい気分だった。<br> <br> 「なんだ、そこにいたのか」いつの間にか、先導役のリーダーと彼の仲間が傍に立っていた。「あまり遠くへ行くんじゃないぞ。今が冬で助かったな。これが夏だったら、お前、街のずっと南の端の方まで行ってただろう?」"<br> <br> 実際のところ、彼は迷子になってしまっていた。こうして背丈の高い木々に囲まれて蟻のようにさまよっていると、すっかり方向感覚を失ってしまうのだ。<br> <br> 「あの、こんな名前の宿を、」と言いかけてから、Jurusからの手紙をポケットから取り出すと、「『Paskos母さんの酒場』とか言うんですけど?」<br> <br> 「Pascost母さん?」彼は、親しげな、しかし嘲るような笑い声で返した。「あそこは止めときな、きっと気に入らないぜ。俺だったら、木の上にあるAysiaホールを薦めるね。高い金とるけど、良いところさ<br> <br> 「そこで、人と待ち合わせしているんです」<br> <br> 「ふん、そう決まってるなら、Havel_Slumpに行って、そこ行きのリフトに乗せてもらうんだな。いいか、迷子になってWestern_Crossで居眠してたりするなよ、絶対に」<br> <br> それが最高のジョークであるかのように、この粗暴で年若いScottiの友人達は、彼がFalinestiに張り巡らされた曲がりくねった道を歩いていく背後から爆笑を浴びせたのだった。地面は落ち葉やがらくたで汚れており、時々、頭の上からガラスや骨が落ちて来る始末だった。そのため、彼は絶えずキョロキョロと辺りを見回していなければならなかった。リフト乗り場は、他のリフトが集まる所であるため、非常に入り組んでいた。また、この乗り場は太いブドウの木に固定されており、どうやら、上下にスライドするようだ。これに乗って行けば、街の中心地まで優雅な空中散歩を楽しめるという寸法だ。ただし、人力であるらしい。雄牛の腹ほどもある腕をした男が乗り込んでおり、どうやら彼が操作するようである。Scottiは手近なリフトに乗り込むと、ガラス製のパイプで煙草をふかし始めた。<br> <br> 「Havel_Slumpにまで行きたいんですけど、お願い出来ますか?」と、その運搬夫に話しかける。<br> <br> 彼は頷いてみせた。その数分後、Scottiは二百フィート(六十メートル)の高みに在った。見ると、このリフトを挟むようにして二本の太い枝があり、これを吊るしているからであろう、二本ともが重みでたわんでいる。不規則に木の股に巻き付いて茂っているコケは、木の上に立てられた数ダースの小さな家々にとっての屋根のようである。リフトからはほんの少しの小道しか見当たらなかったものの、その向こうからは、人々の話し声や街の物音、それに音楽も聞こえてくる。Falinesti駅に到着すると、運搬夫にチップを渡して、Pascost母さんの酒場の場所を尋ねてみた。<br> <br> 「よろしいですか、高貴なる御方?ここから、真っ直ぐ、進んで行きなさいませ。きっと、何も見つからないでしょうけど」そう言ってひとしきり腹を抱えて笑ってから、やっと真面目に答える気になったらしい。「MorndasにはHavel_Slumpん所のみんなが『どんちゃん騒ぎ』の真っ最中だぜ。あんたも楽しんでったらどうだい?」<br> <br> それからScottiは狭い道を抜けて行ったが、それには、かなりの注意が必要だった。と言うのも、道の歩き心地は大理石で出来た帝都の大通りにも似ているけれど、所々に、遥か下を流れている河まで真っさ逆様の亀裂が走っていたからである。彼は、ちょっと腰を下ろして休憩を取ると、この高みから下を見下ろしてみた。今日は快晴であるのだろう、実に素晴らしい眺めではあったものの、すぐに縮こまってしまい、じっと見てはいられなかった。「ん?」地上から目を離そうとしたとき、彼は少し不思議なものを見たような気がして、もう一度、下界を覗き込んでみた。河には小さな筏(いかだ)が浮いていて、数インチ(一インチは三センチ)ずつ動いているようだった。だが、よく見ると、その筏は明らかに岸に固定されているのだ。「んん?」彼は、ようやく違和感の源に至った。比喩でも何でもなく、あの筏が動いているのではなく、このFalinesti自身が動いているのだ。しかも、急激なスピードで。<br> <br> そこまで考えてから、ようやく彼は顔を上げると、歩みを進めることにした。と、向こうの曲がり角の方から、何かの煙が漂って来るのが目に飛び込んできた。「ローストビーフ!しかも、とびきり美味い奴だ」その煙の匂いは、彼の空腹を思い出せるのにも、そして、どれだけ危険な所に居るのかを忘れさせるのにも充分だった。さっきの恐怖も放り出して、彼は駆けて行った。<br> <br> 運搬夫が言っていた「どんちゃん騒ぎ」は、その曲がり角の向こう、どんな街の広場にも引けを取らない位に広大なリフト乗り場で繰り広げられていた。見渡す限り、Scottiが圧倒されてしまうような出で立ちの人々がひしめき合って、飲めや歌えの大騒ぎである。リュート弾きも居れば、そのリズムに合わせて踊る人々、更には、ちょっと高くなった所にステージが設えられて、そこで歌っている者もあるくらいだった。彼らのほとんどは、色鮮やかな革や骨で着飾ったBosmerだったが、中にはOrcの姿も見受けられた。彼らOrcは、人々の間を駆け回っては、踊り散らしたり怒鳴ってみせたりと、全く粗暴な連中であった。また、最初は背の高いBosmerかと思ったが、よく見ると、髪を短く切ったケンタウロスも少し居るようだった。<br> <br> 「えー、羊の肉は要らんかえー」しわくちゃな顔の老人が、熱く焼けた石の上で巨大な羊を焼いている。<br> <br> 早速、Scottiは美味そうに焼けた足に噛り付くと、立て続けに、もう一本にもむしゃぶり付いた。喉に詰まった軟骨を、彼の様子にクスクスと笑う売り子を横目で見ながら、手近な白く泡立ったジョッキの中身で飲み込む。その液体は、彼の五臓六腑に染み渡った。<br> <br> 「何です、これは?」<br> <br> 「Jaggaさ。豚のお乳を発酵させたもんさね。どうだい、大瓶で一杯?それに、羊の肉の方も、もう少しどうかね?」<br> <br> また金を幾らか払うと、羊の足を齧りつつ、Jaggaの大瓶を傾けつつ、彼は人ごみの中に入って行った。そして、ここValenwoodまで彼を呼び出したJurusを行き交う人々に探していたのだが、どうにも見つからない。大瓶を四分の一まで空けたところで、彼は人探しを止めることにした。半分まで空けたところで、これからの事は脇にどけて、ダンスの輪に加わった。四分の三まで空けたところで、言葉がさっぱり通じない相手とジョークを交わした。全て飲み終わったところで、彼は仰向けになっていびきをかき始めた。それでも、「どんちゃん騒ぎ」は続く。<br> <br> 翌朝、誰かにキスされているような感覚で目が覚めた。しっかり目は開いていないものの、そのご好意の主に向かって顔を近付けた途端、胸に焼け付くような痛みを受けて叩き起こされた。彼の眼前に居たのは、子牛ほどもある昆虫だった。それは、Scottiを叩き潰そうと棘のびっしり生えた強靭な脚で彼を組み敷くと、刀剣が円状に生えたような口でもって彼のシャツを引き千切ろうとしているのだった。泣き叫びながら必死で手足をばたつかせるも、とてもではないが、敵いそうな相手ではない。「さぁ、食事の時間だ」そんなことでも思っているのか、その昆虫の力はより強まるばかりである。<br> <br> 「もう終わりだ」一方、彼は投げやりにそんなことを考えていた。「もう故郷に帰ることも出来ない。あぁ、帝都に残っているべきだったんだ。きっと、Vanechのところで雇ってもらえただろうに。そうして、一からやり直せば良かったんだ。それなのに……」<br> <br> ――と、唐突にそれの顎の力が弱まる。かと思うと、一度だけ体をぶるっと震わせると、次の瞬間、胆汁を撒き散らして死んでしまった。<br> <br> 「よし!」叫び声が聞こえた。そう遠くない。<br> <br> 何が起こったのか分からないScottiは、まだ横たわったままだった。彼の胸は焼けただれ、動悸は耳元でうるさい。寝転んだままの視界の隅で捕らえられたのは、こちらに突進してくる身の毛もよだつ怪物だった。慌てて安全な場所へ這って行こうとしたところへ、鋭く風を切る音。振り向くと、その怪物に矢が深々と突き立っている。<br> <br> 「当たり!」さっきとは別な声。「おい、最初のがまだ生きてるぞ、ちょっと動いたんだ」<br> <br> 今度は、クロスボウのボルトが風を切って、それは彼の上に被さっている死骸に命中した。「自分まで串刺しにされてはかなわない」と必死で声を上げてみるものの、どうやら、このでかぶつのせいで声はくぐもってしまっているみたいだ。用心してこの下から這い出そうとしたが、その動作は、射手達に怪物の生存を確信させるものに過ぎなかったようだ。結果、矢の嵐が彼の上を吹き荒れることになる。今や、標的はぼろくずのようになって、彼は死骸から溢れ出る血の海に漂っていた。<br> <br> Scottiがまだ若かった頃、あまり「模擬戦闘」についてよく知らなかった頃、そのスポーツを観るために帝都の闘技場にしばしば足を運んでいた。そんなとき、彼は、ベテランの戦士に戦闘の秘訣を尋ねたことがある。「そう、『秘密だぜ』って言って教えてくれたんだ」と彼は思い出す。「『何をすべきか分からないなら、とりあえず盾の後ろに隠れとけ』ってね」<br> <br> Scottiはその忠告に従うことにした。一時間後、すっかり物音も無くなったところで、忌々しい虫の「残り物」を投げ棄てると、彼は出来るだけ速く立ち上がった。が、少し遅かったようだ。八人の狼藉者は、既にピタリと彼に向けて照準を合わして、いつでも発射できる状態だ。<br> <br> 「……あ?」ようやく、その中の一人が彼の姿を認めたようだ。そして、急に腹を折って笑い出した。「おいおいおいおい、『Western_Crossでは居眠りするな』って言ってくれる心優しい奴は居なかったのか?あんたが酔っ払ってえさになっているのに、どうやってHoarvorを撲滅しろってんだ?<br> <br> Scottiは頭を振り振り、リフト乗り場沿いの道を引き返して行った。そして、一つ角を曲がって、ようやくHavel_Slumpに到着した。彼は、血塗れで服もぼろぼろで疲れきっていて豚の乳の発酵品も飲み過ぎだったから、すぐにでも横になってしまいたかった。だから、「Pascost母さんの酒場」に足を踏み入れた時は、その酒場は湿っぽくて樹液でぬめっていてカビ臭かったけれど、心の底から安心したものだった。<br> <br> 「Decumus_Scottiと言います」彼は名乗った。「ここにJurusという人が居るはずなんですけど?」<br> <br> 「Decumus_Scottiだって?」肉付きのいい女主人――彼女こそ、Pascost母さんその人だ――は、頭をひねらせているようだった。「その名前、聞いたことがあるね。そうだ、Jurusからの書置きがあるはずだ。ちょっと取って来るからね」<br> <br> 訳注:hoarvorの意味が不明であったため、訳出せずにおいた。恐らく、昆虫様の怪物の名称であろう。 }}}}
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